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2014/12/10

私という主観の考察。4(私は私を嫁にする)

溜まった分二つ記事を書こうと思います。
前回の続きをどうぞ。



 記憶が統合されていた。昨日の二人分の記憶が一つになり、私に対する彼女の思いと彼女に対する私の思いが混ざっていった。私の感じた嫌悪感と彼女の感じた羨望感が一つにまとまり、よく分からないモヤモヤした物になる。
「寝ると記憶が一緒になるのね。」
朝の眠気を覚まそうと、ボそっと呟く。
 隣を見ると体を丸めて寝ている体が在った。空気を吸い小さく寝息を立てている。布団の外に出していた、手が冷えてしまい布団の中に戻す。布団で丸まっている彼女の温まった手を握りつつ自分の手を温める。指に指を重ね彼女の人差し指を親指で撫でる。
 逆の手で手のひらから、銀飾のナイフを取出し刃の鏡面に光を反射させる。布団から手を取出し、人差し指にナイフの刃を当て指を刃に向けて動かす。しかし、指とナイフの間に青の次元の裂け目みたいのができていて、指自体は切れていないようだった。
「あれ、おはよう」
と隣から声が聞こえて
「あ、うん」
と言って返事をし、ナイフを手のひらに戻す。
「おはよ」
と、指を伸ばしパーにして見せる。
 指で目を擦り、手で隠しつつ欠伸をする。彼女の顔を見る。
「朝だね」
「朝だね」
彼女はオウム返しに答えて同じような表情をした。


「なんで、遅れるかな、もうちょっと、はやく」
「なっ、ちょっと時間が掛かった、だけじゃん」
「待ってたら、こっちまで、洒落になんないから」
「んなこと、いっても、はあはあ、あんただって」
「なし、それは、なし、なしなのー」
風を浴びつつ、足を全力で動かす。


「あれ」
「あれ」
学校の正門にたどり着くと、登校する人の纏まりは無く休日のような静けさだった。構内では部活をする人の声が小さく響き、正門にたどり着いた私たちは戸惑いを感じていた。
「なんで、休日みたいな感じなの」
「さあね、時計を見てみよう。」
私は時計を確認し日付を見てみると
「えーと、時間が一日すすんでいる」
時計の日付は十一月三日、私の記憶では今日は十一月二日なので一日時間が進んでいる。
 私にとっての昨日は木曜なので今日は金曜のはずなのだが、私の昨日の記憶がごっそり抜けおちているからなのか、もしくは私の体が一日先にタイムスリップしたからなのか、ともかく一日時間が進み今日は十一月三日土曜日で学校は休みだった。
「まちがえちったかなー」
今日が休日なのに納得がいかず、正門の前で立ち尽くしていた。
「帰る?」
と隣から、もう一人の私が聞いてきた。
 戻るというジェスチャーを手の先でしながら、納得いかないという顔と私に尋ねている顔が混じった顔をしていた。
「そうだね」


家に帰り何をしようという話になり、ⅤRボックスに行こうという事になった。
 商店街を歩き人ごみに紛れてはぐれないように、彼女の指を握っていた。ⅤRボックスとは仮想現実(ⅤR)を脳波に変えて脳に直接伝える機械を、20台ほど用意している、マンガ喫茶みたいなところなのだ。それぞれの台は個室に一つか二つあるので部屋の感じはカラオケに似ている。ⅤRにログインしているときは意識がなく無防備なので、個室なのは安心できる所なのだ。ⅤRの機械自体はリラックスチェアみたいなもので、3Dグラフィックを脳が理解できる情報に変換して脳の視覚野にピンポイントで送り込む、また運動野の情報を読み込んでコントローラー代わりにする。ⅤRのアバターの触覚も脳の感覚野に送られる。まあ、現実に近い感覚でファンタジーの世界を遊べるという事になる。一階はなぜかランジェリーショップなので、あまり視線を合わせないように少し傷んだ階段を上る。
 カウンターの店員さんに「二人部屋空いてますか?」と聞いてみた。店員さんは、
「運が良かったですねー、一人部屋は全部満室なんですが、二人部屋ならいくつか空いてますよ、どこにしますか?」
カウンターに置かれた部屋の間取りが書かれた、メニューを確認して部屋を指定する。
「100C1の部屋で」
「はい、了解しました、何時間遊ばれますか?」
「はい、まず二時間使います。」
「C1席で二時間ですね、これが部屋に入るときに必要なカードキーです。」
カードを二枚渡されたので、もう一人の私にそのうちの一枚を渡す。
「私、ドリンクバーによってくるから、先に入っておいて。」
と私が彼女に言った。
「うん、分かった、じゃ先に部屋へいってるね。」
とやり取りしてからカードキーをポケットに入れてコーラを注ぎに行った。


コーラをグラスに入れてトレイに置いてC1の部屋の前に来た。カードをドアに当てロックを解除して体でドアを押して中に入る。
「いらっしゃーい」
抑揚のない声で歓迎の言葉をかけられた。
「コーラ持ってきたよ、飲む?」
「飲む、飲む。」
少しグラスに口を付けてから、バーチァルリアリティーに入るためのチェアをアルコールティッシュで掃除してから座り、右横の薄いディスプレイの角度を操作して、ログインするゲームを選択する[ログインしますか?]との問いにEnterを押す。
 意識を落ち着かせ、脳に直接入力される情報をいやな感覚として感じながら、落ち着き無心に徹する。
 ゲームはプレイヤーの情報を脳の部分に直接記録するので、セーブデータを持ち歩く必要はない、プレイヤーの識別も個人個人で違う、脳紋というものを使って識別するので、ログイン情報をいちいち覚えておくこともない。
 強烈な眠気に襲われ意識を手放す。


続く
この小説の著作権は作者の物なので、勝手にコピーとかしないでね。リンクはどんどんしてください。
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2014/12/10

私という主観の考察。3(私は私を嫁にする)

だいたい、一か月に一回ぐらいで更新していこうと思います。
それでは、前回の続きです。どうぞ。



 「なにしてんのー」
 と聞いてくる、彼女の声は高飛車で斜の構えた響きなのだ。
ベットはひずみ、体重をかけられた溝は人の体温と共に、肩に近づく。
「なにしてんのー」
さっきと同じセリフなのだが、耳の近くで聞かされるぶん感情も偏った愛情もよく伝わってくる。心臓のドクンドクンする音が重くなってきた。
 枕に顔を埋めて、綿の混ざった空気を飲み込む。
「にゃ、聞こえてるかなー」
耳の端を爪で擦られてる。
「にゃ、どうなのかにゃー」
「ふぁー、はー、くっ、ふぁっ」
酸素の欠乏した頭では、まともに判断することもできない。
「にゃ」
顔を向けると、私がいた。
今の自分は、たぶんすごくばかな顔をしてるだろうと、恥ずかしさと可愛さに萌える気持ちと自分を卑下する気持ちが混ざった表情、その顔を数センチの距離で見られていること自体にも、恥じらいが溢れて
「にゃ、にゃぁー、にゃにゃー」
それが爆発した。
「にゃ、はずかしいにゃ、」
「ちょっーぷ」
「痛っ」
手刀の小刀で額を小突かれる。
「見てるこっちが、はずかしいのだよ。」
枕に顔を埋めて、
「はあぁぁはぁ」
と、自分でも気持ち悪いと思う声を上げ、もう一人の自分の呆れ顔をよそ目に一人悶えている。
「自販機でコーラかってくるにょ。」
と言って手を振りつつ、彼女は部屋を出て行った。


「コーラだよ、ほい」
二人分の、コーラを買ってきてくれたので、「にこ」と笑顔を見せ、アルミの感触の缶を受け取る。
 飲み口を開けシュワーと音を立てる、炭酸を少し味わう。
「ぱか」
もう一人の私も同じく炭酸に舌を付ける。
ぽんぽん、とベットを叩き
「すわっていいよ」
と言う、腰に手を当ててアルミ缶を傾ける彼女は、それに気づいたようで
「分かった」
と言って、隣に座った。
 泡に混じったカラメルと砂糖の味を味わいつつ、目を合わせられないその顔から下に目をそらして、膝と腿に視線を向ける。人差し指をそれに指先を当てなぞる。八の字に指先を動かしてみる。
 ふと彼女の顔を見ると、くすぐったそうに顔をにこましつつ、手を口に当て笑みがこぼれないようにしている。
「こしょこしょ」
と本格的に五指を使い太ももと足裏をくすぐる、半分以上無くなったアルミ缶の中身に気を使いつつ必死になって笑いをこらえている様子に、属性を刺激され目一杯くすぐる。
 あまりのくすぐったさにベットに倒れこむ、もう一人の私。
足の付け根の腰骨に腕を置きつつ、その顔を覗き込む。
彼女は左手で目を覆いつつ、小さなため息をつく。
「うさぎさんは鏡の国に戻りなさい。」
と、彼女はつぶやき気づくと私の手が透けて消えて行った。
「ちょっとまった、私を消すなー!」
「ノープロブレム」
「問題ありだよ!」
左手に隠れた視界の中でもう一人の自分を想う。
 体が消えるという事は私と彼女、お互いの了解があって、始めて体の消去がはじまるのだから、彼女がこの世から消滅することを特段に嫌がってわけではないのだ。
 そして統合される彼女の人格、が私のそれと混じっていく。
(えーと)
(えーと)


私は想像の世界に落ちていく、鏡の国にあるテーブルと二つの椅子、ティーセットと砂糖の塊、紅茶の入ったポットは宙に浮いていて、手元のカップに湯気の立つ紅茶を注いでいる。
「えーと、こんなところに呼び出して、何の御用なのかしら。」
と目の前に座る彼女から聞かれる。
「ここは私の心のなか、あなたと私の境界は人格が統合された時点で存在しないわ、つまりお茶を楽しみながら、ゆっくりと話ができるという事よ。」

私は、無理やり体を消されて彼女の意識とごちゃ混ぜになった意識のかけらを集めて、白とニスの塗られた椅子に座っていた。
注がれた紅茶に口をつけるが、夢の中の食べ物と同じように味らしい味はしなかった。
「えーと、こんなところに呼び出して、何の御用なのかしら。」
カップに入った赤茶の飲み物に手を付けつつ彼女は答えた。
「そうね、あたしとあなたは同じようで違う人格、ゆっくり話ができる時間が欲しかっただけよ」
右手でひじを机に付け、ほほを支えカップに口を付けた彼女は上目使いにこちらを見ていた。
「まず、わたしとあなたは一つの体、一つの部屋、一つの情報端末を二人で使うことにこれからなるよね」
「そのとおりだね」
「あなたは、どう考えているの?」
聞かれたことを考えてみる。この部屋に住人として住んでいるのは私なのだが、体も意識も分裂しているため、一人の個人としては扱うことはできない。一方この部屋の住人を、私と彼女の二人に限定すると、ベットも端末も基本的にお風呂も共用しなければならない。
私の能力(ナイフの能力)はさらに多く、体を分裂させられるだろうから万が一、十人に分裂してしまえばこの部屋の許容能力で間に合うとは思えない。無論自分自身とけんかなどすれば、人格を統合した時に、嫌いな考え方を自分の考え方として受け入れなければ、ならなくなる。そんなことは考えたくない。ある意味デメリットの方がメリットより多いのではと思ってしまう。

左手で覆っていた、目を眩しさに戸惑いながら開けていく。突然だがさっきまで二つの体だった私たちは、まだ完全には人格が統合されていない。つまり脳の部分的な支配を私の人格と彼女の人格で同時にできることになる。心臓の鼓動が少しずつ増してくる。人差し指を私が操り、舌とその周りの感覚と支配権を彼女の人格に渡す。人差し指を口に運び、舌先に触れる。舌の右端から左端に指をなぞる。
「ふっふっ、はずかしいわねこんなことして、」
「ゲっ、なんでいんの」
「ふっふっ、あたしはあなたと別の独立した人格なのよ、何をしようと私の勝手よ」
人差し指を口にくわえたまま、のほほーんとした顔を私は浮かべているのだろう。
「ふぇ、」
私の人差し指の、第二関節を彼女が人差し指と親指で掴み彼女自身の口に持っていく。
「こうした方が、はやいじゃん」
と彼女は鼻で笑っているようで、私はむっとした。
 彼女は私の指の腹を舌先で舐めていく。
「……ドキドキ、します。」
「そだね」
私の顔は少し赤くなり、彼女も同じように赤い顔を下に向いて見えないように隠した。
 私はベットの上を転がり枕に頭を乗せる。彼女もベットにひざを乗せ同じく枕に顔を埋める。枕にしみ込んだシャンプーの香りを吸う。隣にいる彼女の髪を梳き、もう一人の私の項に顔を埋める。
「枕と同じ匂いがするー」
(きもい、バカ、はなれろー、死んじゃえー)
と、恥ずかしさを煩わしつつ、好きと嫌いのメトロノームを行ったり来たりする。項に顔を埋める彼女の体温を感じつつ、肩にも頭の重みを感じる。ねちねちと頬ずりしてくる彼女に嫌悪を抱きつつ、私が彼女の立場なら、迷わず頬擦りするという妄想が生まれそのギャップに胸が詰まる。
「すりすりー」
髪に頬擦りする彼女の顔を覗く。彼女の顔は幸せそうに顔を緩めている。思わず頬を人差し指で突く。
「もう夜中だから、電気消しちゃうよ。」
と言うと
「えー」
「おやすみっ、もう寝るからね。」
部屋の明かりをリモコンで消して、布団を深くかぶる。普段より布団の中が熱かったが、一日が長かった分意識がなくなるのは早かった。



続く
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