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私という主観の考察。3(私は私を嫁にする)

だいたい、一か月に一回ぐらいで更新していこうと思います。
それでは、前回の続きです。どうぞ。



 「なにしてんのー」
 と聞いてくる、彼女の声は高飛車で斜の構えた響きなのだ。
ベットはひずみ、体重をかけられた溝は人の体温と共に、肩に近づく。
「なにしてんのー」
さっきと同じセリフなのだが、耳の近くで聞かされるぶん感情も偏った愛情もよく伝わってくる。心臓のドクンドクンする音が重くなってきた。
 枕に顔を埋めて、綿の混ざった空気を飲み込む。
「にゃ、聞こえてるかなー」
耳の端を爪で擦られてる。
「にゃ、どうなのかにゃー」
「ふぁー、はー、くっ、ふぁっ」
酸素の欠乏した頭では、まともに判断することもできない。
「にゃ」
顔を向けると、私がいた。
今の自分は、たぶんすごくばかな顔をしてるだろうと、恥ずかしさと可愛さに萌える気持ちと自分を卑下する気持ちが混ざった表情、その顔を数センチの距離で見られていること自体にも、恥じらいが溢れて
「にゃ、にゃぁー、にゃにゃー」
それが爆発した。
「にゃ、はずかしいにゃ、」
「ちょっーぷ」
「痛っ」
手刀の小刀で額を小突かれる。
「見てるこっちが、はずかしいのだよ。」
枕に顔を埋めて、
「はあぁぁはぁ」
と、自分でも気持ち悪いと思う声を上げ、もう一人の自分の呆れ顔をよそ目に一人悶えている。
「自販機でコーラかってくるにょ。」
と言って手を振りつつ、彼女は部屋を出て行った。


「コーラだよ、ほい」
二人分の、コーラを買ってきてくれたので、「にこ」と笑顔を見せ、アルミの感触の缶を受け取る。
 飲み口を開けシュワーと音を立てる、炭酸を少し味わう。
「ぱか」
もう一人の私も同じく炭酸に舌を付ける。
ぽんぽん、とベットを叩き
「すわっていいよ」
と言う、腰に手を当ててアルミ缶を傾ける彼女は、それに気づいたようで
「分かった」
と言って、隣に座った。
 泡に混じったカラメルと砂糖の味を味わいつつ、目を合わせられないその顔から下に目をそらして、膝と腿に視線を向ける。人差し指をそれに指先を当てなぞる。八の字に指先を動かしてみる。
 ふと彼女の顔を見ると、くすぐったそうに顔をにこましつつ、手を口に当て笑みがこぼれないようにしている。
「こしょこしょ」
と本格的に五指を使い太ももと足裏をくすぐる、半分以上無くなったアルミ缶の中身に気を使いつつ必死になって笑いをこらえている様子に、属性を刺激され目一杯くすぐる。
 あまりのくすぐったさにベットに倒れこむ、もう一人の私。
足の付け根の腰骨に腕を置きつつ、その顔を覗き込む。
彼女は左手で目を覆いつつ、小さなため息をつく。
「うさぎさんは鏡の国に戻りなさい。」
と、彼女はつぶやき気づくと私の手が透けて消えて行った。
「ちょっとまった、私を消すなー!」
「ノープロブレム」
「問題ありだよ!」
左手に隠れた視界の中でもう一人の自分を想う。
 体が消えるという事は私と彼女、お互いの了解があって、始めて体の消去がはじまるのだから、彼女がこの世から消滅することを特段に嫌がってわけではないのだ。
 そして統合される彼女の人格、が私のそれと混じっていく。
(えーと)
(えーと)


私は想像の世界に落ちていく、鏡の国にあるテーブルと二つの椅子、ティーセットと砂糖の塊、紅茶の入ったポットは宙に浮いていて、手元のカップに湯気の立つ紅茶を注いでいる。
「えーと、こんなところに呼び出して、何の御用なのかしら。」
と目の前に座る彼女から聞かれる。
「ここは私の心のなか、あなたと私の境界は人格が統合された時点で存在しないわ、つまりお茶を楽しみながら、ゆっくりと話ができるという事よ。」

私は、無理やり体を消されて彼女の意識とごちゃ混ぜになった意識のかけらを集めて、白とニスの塗られた椅子に座っていた。
注がれた紅茶に口をつけるが、夢の中の食べ物と同じように味らしい味はしなかった。
「えーと、こんなところに呼び出して、何の御用なのかしら。」
カップに入った赤茶の飲み物に手を付けつつ彼女は答えた。
「そうね、あたしとあなたは同じようで違う人格、ゆっくり話ができる時間が欲しかっただけよ」
右手でひじを机に付け、ほほを支えカップに口を付けた彼女は上目使いにこちらを見ていた。
「まず、わたしとあなたは一つの体、一つの部屋、一つの情報端末を二人で使うことにこれからなるよね」
「そのとおりだね」
「あなたは、どう考えているの?」
聞かれたことを考えてみる。この部屋に住人として住んでいるのは私なのだが、体も意識も分裂しているため、一人の個人としては扱うことはできない。一方この部屋の住人を、私と彼女の二人に限定すると、ベットも端末も基本的にお風呂も共用しなければならない。
私の能力(ナイフの能力)はさらに多く、体を分裂させられるだろうから万が一、十人に分裂してしまえばこの部屋の許容能力で間に合うとは思えない。無論自分自身とけんかなどすれば、人格を統合した時に、嫌いな考え方を自分の考え方として受け入れなければ、ならなくなる。そんなことは考えたくない。ある意味デメリットの方がメリットより多いのではと思ってしまう。

左手で覆っていた、目を眩しさに戸惑いながら開けていく。突然だがさっきまで二つの体だった私たちは、まだ完全には人格が統合されていない。つまり脳の部分的な支配を私の人格と彼女の人格で同時にできることになる。心臓の鼓動が少しずつ増してくる。人差し指を私が操り、舌とその周りの感覚と支配権を彼女の人格に渡す。人差し指を口に運び、舌先に触れる。舌の右端から左端に指をなぞる。
「ふっふっ、はずかしいわねこんなことして、」
「ゲっ、なんでいんの」
「ふっふっ、あたしはあなたと別の独立した人格なのよ、何をしようと私の勝手よ」
人差し指を口にくわえたまま、のほほーんとした顔を私は浮かべているのだろう。
「ふぇ、」
私の人差し指の、第二関節を彼女が人差し指と親指で掴み彼女自身の口に持っていく。
「こうした方が、はやいじゃん」
と彼女は鼻で笑っているようで、私はむっとした。
 彼女は私の指の腹を舌先で舐めていく。
「……ドキドキ、します。」
「そだね」
私の顔は少し赤くなり、彼女も同じように赤い顔を下に向いて見えないように隠した。
 私はベットの上を転がり枕に頭を乗せる。彼女もベットにひざを乗せ同じく枕に顔を埋める。枕にしみ込んだシャンプーの香りを吸う。隣にいる彼女の髪を梳き、もう一人の私の項に顔を埋める。
「枕と同じ匂いがするー」
(きもい、バカ、はなれろー、死んじゃえー)
と、恥ずかしさを煩わしつつ、好きと嫌いのメトロノームを行ったり来たりする。項に顔を埋める彼女の体温を感じつつ、肩にも頭の重みを感じる。ねちねちと頬ずりしてくる彼女に嫌悪を抱きつつ、私が彼女の立場なら、迷わず頬擦りするという妄想が生まれそのギャップに胸が詰まる。
「すりすりー」
髪に頬擦りする彼女の顔を覗く。彼女の顔は幸せそうに顔を緩めている。思わず頬を人差し指で突く。
「もう夜中だから、電気消しちゃうよ。」
と言うと
「えー」
「おやすみっ、もう寝るからね。」
部屋の明かりをリモコンで消して、布団を深くかぶる。普段より布団の中が熱かったが、一日が長かった分意識がなくなるのは早かった。



続く
この小説の著作権は作者にあります。コピーとかしないでくださいね。リンクはしてもらって一向に構いません。
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